モスクワにて青子らとリタの戦闘が始まり数時間が経過しつつある。

その状況は万人にとって意外なことに、

「おほほほ、どうしたのかしら?」

リタが青子達を相手に完全に押していた。

五十八『鏡・紺碧』

何故このような事がおきたのか?

普通に考えて、常識に照らし合わせればこのような事態起こる筈もない。

いくら二十七祖の一角とはいえ相手は一人、こちらは祖が四に魔法使いまでいる。

どちらが勝つかなど自明の理であるはず。

にも拘らず現実としてはリタがこれだけの相手と五分以上の戦いを見せている。

何故か?

それは彼女の能力にあった。

「うっかりしとったわ・・・」

珍しく途方に暮れる口調でコーバックが愚痴を零す。

「確かにな、第十五位リタ・ロズィーアン。魔力は祖の中では並、身体能力は平均以下、にも拘らず、オーテンロッゼからは側近の中でも片腕的な待遇を受けていた。二十七祖の中であ奴しか持たぬ、歴代の十五位の中でも最高位の予知能力ゆえに・・・」

二十七祖の大半が今日まで大多数生き残った最大の要因。

それは歴代の第十五位にその功績があった。

親より受け継いだその予知能力は的確に祖の滅びを予言し、祖は予言を受けて子を作り、あらかじめ作っておいた自分の子に力を委譲させる。

そうやって二十七祖は生き延びてきた。

そんな十五位の中でもリタは最も能力が強く、予知するのではなく未来を作り出すとまで言われるほどだった。

それ故にその予知能力を最大限活用したのが彼女の固有結界『未来確定の書(フューチャー・スペル)』。

固有結界といっても周囲の空間に作用するのではない。

彼女の固有結界、それは彼女が持つ一冊の本。

彼女が口にした言葉は全て、この本に書き留められ、この本に書き留められた以上、それはこれから先起こる確定事項となる。

そう例えば・・・

「こんのお!!」

青子が魔力弾を撃つがそれは

「・・・それは撃った者に跳ね返る・・・」

リタがそう口にした瞬間、手にした『未来確定の書(フューチャー・スペル)』にその言葉が正確に書き留められ、同時に魔力弾はありえない角度で急旋回し、青子本人に襲い掛かる。

「!!」

咄嗟に魔力弾を撃ち相殺させるが、その隙を突いてリタが青子に接近その首を掴む。

だが、青子の動きはどう言う訳か鈍い。

「あらあら本当に良く頑張るわねえ。さすが『ミス・ブルー』と褒めましょうか?で、も、これでおしまい」

そう言って伸ばした爪で青子の首を切り裂こうとするが、それをプライミッツがリタに体当たりを敢行する事で免れた。

「良く頑張るわねえ・・・この犬ころ!!」

そう言ってプライミッツの腹を蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされ転がりながらも立ち上がったプライミッツはリタに視線をあわせようとする。

しかし、目の前のリタ本人は余裕の表情で逃げる素振りも見せない。

「無駄ですわよ。もう確定されているのですから『お前は私を見ることは出来ない』と」

嫌みったらしく言うと再び蹴り付ける。

「全く品のない犬の相手なんてうんざり。とっととこれで死」

語尾に重なるようにリタの目の前で一発の魔力弾・・・いや、閃光弾が炸裂した。

「!!ぎゃあああああああ!!」

おぞましい絶叫を上げて顔を覆い転げまわるリタ。

何の備えもなく裸眼で閃光弾を受けた為にリタの視力は完全に殺された。

それに加えて爆発の際に飛び散った黒鍵の破片がリタの顔を中心に切り裂いた。

閃光弾と黒鍵でリタは一時的に無力化され、青子達はフィナの『幽霊船団』旗艦に退避する。

退避といっても船団の各艦は地上に不時着し骸骨兵士も殆どが朽ち果てている。

「大丈夫でっか蒼崎はん」

「何とか生きてるわよ。ったく、まさかあんな裏技で私達を攻めるとは思わなかったわ」

コーバックの問い掛けに青子は愚痴で返す。

あんな裏技とは勿論『未来確定の書(フューチャー・スペル)』の事だ。

戦闘が始まるや否やリタは自身の切り札たるこの書を展開、二つの事項を確定させた。

『お前たちの身体の動きは鈍くなる』と『お前たちの魔術は魔力が徐々に抜け落ちていく』。

これにより青子達の動きは著しく制限され、魔術も威力が落ち込んでいる。

「魔力はあるけど、使った所で少しずつ魔力が抜けて威力も落ちる・・・士郎から聞いたオーテンロッゼの『霧中放浪(ミストロード)』と同じ効果ね」

「ただ、体から魔力が抜け出る気配はない。それだけでもありがたいものだ」

「せやけどゼルレッチ、ワイらの攻撃相当威力落ち込んでいるで。これやと影響受ける前の威力にするにゃあ相当の魔力注ぎこまなあかんで」

「だけど私達の魔力も無限じゃない。いずれ枯渇する。それに加えてこの体の鈍さ、やばいわよ持久戦や接近戦に持ち込まれたら私たちに勝ち目は皆無ね」

台詞の内容だけなら深刻なのだが、

「その割には蒼崎はん、焦りが内容に見えるが」

コーバックの指摘通り青子の表情に焦りは見受けられない。

むしろ何かを楽しみにしている様にも見えた。

「ええ、士郎からちょっと面白いもの渡されてね」

「面白いものか。蒼崎それはこちらの勝ち目を上げられそうなものか?」

「上手くいけば」

「・・・ではそれに賭けてみよう異論はないな」

ゼルレッチの問い掛けに頷いた。

そしてそれにあわせるように外から

「何処に行ったかしら〜情けないですわね〜魔法使いや二十七祖がたった一人倒せずに尻尾を巻いて逃げるなんて」

リタの挑発交じりの声が聞こえてきた。

「傷が治ったようやな」

「じゃあ老師、アルカトラス、あんた達は少し間だけでいいからリタの注意を引き付けて」

「どれ位や?あんま長すぎるようやとこっちがもたへんで」

「二・三分ってとこよ。それでも無理?」

「楽勝や楽勝。ほんなら頼むで」

コーバックの言葉を皮切りにバラバラに飛び出す。

「さてと、まさか士郎曰く『念の為の保険』が役立つなんてね。思いもしなかったわ」

そう言って青子が取り出したのは・・・









一方、イギリス海峡での海戦はその序盤はメドゥーサの圧倒的優位の内に進んでいた。

『六王権』軍海軍も当然だが無抵抗ではない。

必死に抗戦したが、相手は高速で飛行し体当たりだけで船の横っ腹をぶち抜く。

次々と船は海の藻屑と消え、流水の抵抗の無い、もしくは薄い死者は流水に呑まれ消滅していく。

遂にはスミレの乗る艦も爆発と共に沈没していく。

「・・・この程度ですか・・・ずいぶんあっさりしたものでしたね」

いささか拍子抜けした口調で沈んでいく艦艇を見ながらポツリと呟く。

だが、やや弛緩した空気を更に緩めるような暢気な声が聞こえた時メドゥーサの神経は張り詰めた。

「すごぉいすごぉい、お船が全滅しちゃったぁ」

波間に漂いながらスミレがメドゥーサに拍手する。

「じゃあさぁ、今度はぁ、私のぉ番だねえぇ」

そういうや突然高度が下がったような錯覚をメドゥーサは覚えた。

当然だがメドゥーサの乗る天馬は高度など下げてもいないのだが、そう思ったのも無理も無い。

いきなり自分とスミレの目の高さがいきなり同じになったのだから。

つい先ほどまではメドゥーサはスミレを見下ろしていたにも関わらずだ。

あまりの事に思考が真っ白になったがスミレの発した次の言葉に我に帰った。

「それじゃあぁ・・・いっただきまーすぅ」

口を開きその口でメドゥーサの首筋に噛み付こうとする。

それをぎりぎりで回避、大勢を立て直すべく天馬を操り高度を上げて離脱を試みるが、いくら高度を上げても海面が離れる気配は無い。

「これは一体・・・」

「えっへっへ〜私の能力だよぉ〜空想具現化、二十七祖じゃあさぁ〜私だけが使えるんだぁ〜」

見れば隣で天馬と同じ速度でスミレが並走していた。

「くっ!」

慌てて方向転換しようとしたがそれを海面から浮かび上がった手が天馬を脚を掴む事で動きを鈍らせる。

当然天馬もそれを振りほどこうと暴れるが、たちまちの内に無数の手が重なるように天馬の四本の脚とメドゥーサの両脚を拘束、完全に動けなくなってしまった。

メドゥーサも自分の可愛い仔である天馬を掴む不埒な手を振りほどこうと、ダガーで切り落とすが、次々と新手が出て拘束に参加してくる為、ほとんど効果は無い。

そして

「やっとつかまったぁ〜じゃあ今度こそぉ〜いっただきまぁ〜す」

接近してきたスミレが大きく口を開いた。









黒鍵でやられた傷は当に回復し、突然の閃光でほとんど失われた視力も戻り、改めてゼルレッチらを探し始めたリタだったがその必要は無かった。

突然四方から探し人が現れたのだから。

「あら?わざわざ死にに来てくださったのかしら?動きはままならず、攻撃手段も乏しいのに出てきてくれるなんて」

「何とでもほざけ。どの道持久戦にも持っていけぬ。ならば短期決戦に挑む他無いであろう」

嘲りに対するゼルレッチの返答を聞き更に侮蔑の色を深める。

「何の勝ち目も無いのに特攻を仕掛ける・・・万華鏡(カレイドスコープ)と謳われた貴方も落ちぶれましたわね。私達と共に『六王権』陛下の元に馳せ参じればこのような惨めな最期を遂げずに済んだのに・・・」

「やかましいわボケェ、来るんならとっとと来いや」

リタの嘲笑にコーバックが挑発で返答する。

「あらあら、そんなに死にたいの・・・ではお望みどおり殺してあげる!」

手始めにコーバックを始末しようとしたリタをコーバックは手早く『永久回廊』に閉じ込める。

しかし、リタに焦り等ない。

「無駄な事を・・・『結界は消え失せる』」

書に確定は書き込まれ『永久回廊』は消滅、改めてコーバックを殺しに掛かるが、コーバックの姿は既に無く背後からフィナ、プライミッツが同時に襲い掛かる。

しかし、動きの鈍った二人の攻撃等たとえ祖の中では平均的な身体能力のリタでも簡単に避けられる。

避けた所へリタはフィナを貫こうとするがそれをプライミッツが再び体当たりで阻止、フィナを引きずりながら後退する。

それをすぐさま追撃に移ろうとしたリタにゼルレッチの宝石剣の斬撃は襲い掛かるが、やはり魔力は抜け落ちリタをしばし足止めする程度の効果しか見込めない。

そんな中、青子は旗艦、マストの頂上である物に魔力を込め詠唱を唱え始めていた。

「・・・出雲に神あり」

それは鏡だった。

手鏡と言うよりも礼装や儀式等で使われるような淵の装飾も豪華な鏡。

「神儀確かに魂に息吹、参賀スイケンに天照」

詠唱と共に青子の手に持っていた鏡はひとりでに浮遊し少しづつ回転を始める。

「是、自在にして禊の証」

回転の速度は徐々に早まり光を勝手に放つ。

「??何ですのこれ」

その光にリタがようやく気付いた。

しかしもう遅い、青子の詠唱は最終段階に入っていた。

「名を・・・玉藻鎮石、信仰宇迦の鏡なり!!」

詠唱を唱え終えると同時に鏡の光が周囲を照らし、そして光は直ぐに消えた。

「・・・なーんてね。みんな!遠慮も無しよ全力で反撃するわよ」

いたずらっぽく青子がそう呟いて笑い、何の前触れも無くそう宣言し。

「スフィア!!」

全力全開で魔力砲をぶっ放した。

「!!」

いくら魔力が抜け出ると言えこの威力では例え落ちたとしても受ければただではすまない。

かと言って書でまた反射を確定させようにも間に合わない、そう判断したのだろう。

初めてリタは本気で回避した。

しかし、そこに待ち構えたようにゼルレッチの宝石剣での斬撃が連続で襲い掛かる。

更に不時着状態の『幽霊船団』が次々と浮上、リタ一人に砲撃を開始する。

「くっ!!自棄になりましたの!そんなに魔力を使えば直ぐに魔力切れに・・・魔力切れに??」

しかし、リタの言葉とは裏腹に青子達の魔力に尽きる気配はまるで見受けられない。

青子が魔力砲を撃ってから気でも触れたかのように全力での攻撃を続け、だと言うのに魔力の欠乏の素振りも見せないことにリタは心底の恐怖を覚えた。

「なんで、なんで、何で何で何で何で何で何でなのよぉ!!」

一方、

「しっかし、士郎もいろんなもの投影できるわね〜確か『水天日光天照八野鎮石(すいてんにっこうあまてらすやのしずいし)』って言っていたわね」

マストで未だ回転を続ける鏡をちらりと見やりつつもリタへの攻撃を止めない青子がポツリと呟く。

士郎がこの最終決戦時に青子に渡したのは投影した宝具、その名を『水天日光天照八野鎮石(すいてんにっこうあまてらすやのしずいし)』。

元々日本神話において太陽を司る最高神、天照大神の一人格が所有し後に英霊となった玉藻の前が所有する宝具。

直接の殺傷能力は皆無だが、この宝具が展開している間魔術行使において必要な魔力は全てこの宝具が肩代わりしてくれる。

それが青子達の魔力が尽きないからくりだった。

「老師、アルかトラス、そろそろ決着つけないとやばいわよ『水天日光天照八野鎮石(すいてんにっこうあまてらすやのしずいし)』も無限に展開できる訳じゃない。時間を考えてもそろそろ効果も切れるわ」

「そうか、では勝負をつけようか。コーバック」

「はいな」

そう言ってコーバックが懐から一冊の書を取り出した。

「さてと・・・おっぱじめよっか」

そう言ってゼルレッチすら聞きなれぬ言葉で詠唱を唱える。

ちなみに聞きなれぬのも当然、この詠唱、複数の言語を混ぜ込んだ半ば暗号と化した代物。

あらゆる言語を自在に話せるコーバックだからこそ可能な代物。

そして詠唱が終わった瞬間リタに異変が起きた。

周囲に結界が張られそれと同時に身体が動かない。

それどころか口まで利けなくなった。

「思った通りや、己の固有結界は己が言葉として発することが無ければ効果を発揮できないちゅうことやな?」

そこへコーバックが淡々とした表情で近寄る。

動く事は出来ないが眼で何をしたと物語っている。

「別に大したことやあらへん。こいつを使って初歩の封印術を発動させただけや」

そう、大したことではないと言いながらコーバックは先ほどの書を見せる。

しかし、その書を見た瞬間、リタの表情に絶望の影が宿る。

コーバックが手にした書の正体、それは彼が長年封印し続けてきた聖典トライテン。

コーバック・アルカトラスが人間であった頃と死徒になってからも研究と研鑽を積み続けた自身の生涯最高傑作といえる魔道書。

そして自身諸共、トライテンに並ぶ傑作である迷宮『悠久迷宮』に封印し、十一年前志貴によって救出された時持ち出した。

それの一部を発動させただけなのだと。

「さて、此処で決着つけさせてもらうで。ワイらの魔力無限モードもそろそろ時間切れみたいやしな」

そう言ってコーバックと入れ替わるようにゼルレッチと青子が前に出る。

「じゃあ・・・いっくわよ〜」

「身動きがとれぬ者に攻撃は卑怯かも知れぬがこれもまた戦争悪く思うな」

そう言って青子は魔力をありえないほど溜め込み、ゼルレッチは宝石剣に次々と平行世界の魔力を注ぎ込んでいく。

そしてリタはそこから逃げる事もできず怯えきった眼でその結末を見るしか術は無かった。

「はああああ!!スフィア・ブレイク・スライダー!」

極大の魔力砲が三連発、リタを飲み込み、それに追い討ちをかけるように

「滅べ!!虹の極光!」

今まで見てきた中で最大規模の斬撃がリタの残骸を飲み込み消滅させていく。

そして全てが終わった時リタの存在は完全に消え失せていた。

リタの死を証明するかのように今まで戒めを受けていた身体が急激に軽くなる。

「どうやら決着はついたみたいだな」

「ええ、完全に消滅したみたいですね」

そう呟きやっと一息つくそれと同時に展開していた『水天日光天照八野鎮石(すいてんにっこうあまてらすやのしずいし)』は砕け散り、ただの魔力に立ち返りその効果は消えた。

「助かったわ〜ホンマ士郎様様やな」

「同感だね。あれがなければ全員死んでいたからね確実に」

「さてと、まだ仕事は終わっていない。ここの『六王権』軍を全滅させねばな」









メドゥーサの血をむさぼろうとその口を大きく開けたスミレを妨げたのは数本の剣と槍の襲撃だった。

「!!」

敵襲を察するや目的を諦め、外見に見合わぬ素早さで海中に没する事で攻撃を回避する。

「ふん、敵も味方も雑種がこの我の手をわずわらせおって」

そう言うのは黄金の空中要塞『ヴィマーナ』に鎮座するギルガメッシュ。

更に機銃掃射が天馬の足元の水面付近を襲い回避する為か掃射を受けたのか次々と手は離れ天馬はようやく解放される。

「無事のようですね。ロンドンの方を手早く終わらせた甲斐があったと言うもの」

こちらは攻撃ヘリに乗り込んだランスロット。

「貴方方は・・・」

思わぬ援軍に一瞬言葉を詰まらせる。

何しろ一度敵となった相手が姿を現したのだから。

「色々話もあるだろうがそれは後だ。今は目の前の敵の対処が最優先だ」

思わず詰問しようとしたメドゥーサだったがランスロットの正論に口を噤む。

確かに今は目の前のスミレに神経を集中させるべきだ。

「あららぁ・・・なんかぁ援軍が着ちゃったぁー」

メドゥーサと間合いを取りながらスミレが浮き上がる。

その背後からは『六王権』軍海軍死徒が次々と浮き上がる。

勿論全員ではなく海中には会場にいる数の数倍の海軍死徒がいるのだろう。

「ま、いっかぁ〜用は全員殺せばいいんだしぃ〜」

「はっ!つけあがったか雑種の分際でこの我を殺すだと!!」

「出来るよぉ〜特にそこの金色のお兄さんがぁ〜きっとここにいる中だと一番殺しやすいかなぁ〜」

スミレの間の抜けた声で挑発をされると面憎さが倍増するのだろう。

憤怒の表情を浮かべたギルガメッシュがあらん限りの宝具をスミレ目掛けて叩き込む。

だがそれは全て立ちはだかる海水の壁が受け止める。

当然だが海水の壁などすぐに貫通しスミレに届くかと思われたが次の瞬間には宝具はまるで決められた通路を通るようにギルガメッシュ目掛けて突き進む。

それをメドゥーサのダガーとランスロットの機銃が弾く

「うーん惜しいなぁ〜」

「気流を操作して英雄王の投じた宝具を操作したのですか・・・想像以上に抜け目の無い」

「英雄王、留意したほうがよさそうだ。あの敵、外見の腑抜けぶりに騙されれば死ぬのは我々だぞ」

「っ、狂犬の分際で我に命令するな!!」

ギルガメッシュの咆哮と

「じゃあみんなぁ〜攻撃するよ〜」

スミレの号令は同時だった

『イギリス海峡海戦』は次なる局面を迎え、第二幕が上がろうとしていた。

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